「泣かなかったんだ」

そう声を掛けると、ササラはうん、と返事をした。
俺は真面目に頷くササラに、少しだけ笑って。

「こう言う時は、泣いてもいいんだよ」
「………泣いた方がいいの?」

「どっちでも」
「どっちでも?」

「泣かなかったからと言って、寂しくないわけじゃないだろ?」
「うん」

「自然に流れてくるものだから、泣いた方がいいとか泣かない方がいいとか、そう言う事はないんだよ」
「そっか」

頷いたササラがシートを少しだけ倒す。

「寝る?」
「ううん、寝ない。この辺はまだ、空気が綺麗だから」

「そうか。寝たくなったら寝て良いから。昼ご飯の前には起こすし」
「うん」

空気が綺麗、と言うササラに、なら、と窓を少し開ける。
高速道路の入り口まではまだ少しある。

あまりゆっくりしていられる余裕はないけれど、それでも出来るだけゆっくりのスピードで、車を走らせた。
高速のインターチェンジに入る頃には、ササラは静かな寝息を立てていた。

いくら気候がちょうどいいからと言って、体を冷やしてはいけないと窓を閉めてラジオの音量を下げる。
あとは次の休憩所に着いた時にブランケットでもかけてあげたらいいだろう。
そこまで考えてから、そういえばコンビニ寄ってないなと気がついた。
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